【業務の目的】
 水防法の改正により、雨水出水浸水想定区域の指定対象の拡大に伴い必要となる流域下水道区域(公共下水道区域)における雨水出水浸水想定区域の指定に向けた検討を行うとともに、下水道法に基づく計画降雨浸水防止区域図等を作成するものであります。

【解析手法】
 浸水シミュレーション手法により、降雨損失、表面流出、管内水理、氾濫解析の一連の解析を実施します。

【業務の内容】
 流域下水道区域(公共下水道区域)における想定最大規模降雨(L2降雨)による浸水シミュレーションを実施し、水防法に基づく雨水出水浸水想定区域の指定に必要となる内水浸水想定区域図、浸水継続時間等の資料を作成します。
 あわせて、下水道法に基づく計画降雨浸水防止区域図等、以下に示す降雨に対する内水浸水区域図を作成します。

  • 計画降雨(L1降雨)
  • 気候変動の影響を考慮した降雨(L1降雨の1.1倍)
  • 既往最大降雨(L1’降雨)
  • 想定最大降雨(L2降雨)

【キャリブレーション】
 キャリブレーションとは、使用するシミュレーションモデルが妥当であるか(解析目的にかなった再現性を有しているか)を判断し、必要であればパラメータの確認と調整を行うことでシミュレーションの再現性を向上させる作業のことであります。
 シミュレーションモデルの妥当性を判断する際には、水位等の「実績値」とシミュレーションで得られた「計算値」を比較し、整合性を確認します。

【シミュレーション結果】

【業務の目的】
 広島市の八木・緑井地区では、平成26年8月に発生した集中豪雨により多数の土石流が発生し、土砂や流木が住宅地へ流れ込んだことから甚大な被害に見舞われました。この災害を受け、砂防堰堤の整備、広域避難路となる都市計画道路、豪雨時の雨水を処理する雨水渠の整備が進められています。そのうち、雨水渠は市街地から流出する雨水に加え、豪雨時に能力不足となる既存河川からの雨水を取り込むものであり、河川・下水道一体型の施設として当社が計画・設計を行いました。

【施設の概要】
 30年確率降雨時に市街地から流出する雨水と流域内を流れる6本の河川の流下能力を超える雨水、5本の支川・沢から流出する雨水を雨水渠へ取込む施設です。また、放流先の河川には放流量の制限があり、許容量を超える雨水は雨水渠内に貯留させる必要があるため、流下型貯留管として計画しました。

【効率的な流量制御の提案】
1.オリフィス人孔内の落差

 流下型貯留管の最下流端とオリフィスの位置をコントロールポイントとなっていた埋設障害物の上流側へ移動し、縦断高さを上げてオリフィスとの落差を設けることとしました。この落差を設けることでオリフィスからの流出量の変動を抑制し、一定量に近づけることで効率的な流量制御を行うことが可能となりました。

2.流域分割とオリフィスの複数化

 当初の計画ではオリフィスによる流量制御を1箇所で行う予定でありましたが、より効率的な流量制御を行うために、東西で流域を分割し、オリフィスを2箇所設けることとしました。オリフィスと越流堰を組合わせた西側流量制御施設でほぼ一定量に近い流量制御が可能となりました。また、両オリフィスからの流出量のピーク時刻にズレが生じ、河川への放流を効率よく行うことが可能となりました。

【流出解析モデルによるシミュレーションと水理模型実験】
 今回計画した雨水渠は流下貯留併用の施設であることや、延長が約1,000mであり、流達時間の違いによるピークのずれを考慮する必要があるため、流出解析モデル(使用ソフト:InfoWorksICM)を用いて解析を行い、最適な施設規模の設定を行いました。また、シミュレーションによる解析のみでは把握困難な流体や気体の挙動を水理模型実験により検証しました。

【業務の背景】
 近年、想定を超える豪雨の多発により、浸水被害が頻発しており、特に地下街を有する都市部においては、生命に関わる地下街への浸水を防除する取り組みが求められています。このようなことから、平成27年度に改正された水防法では、想定し得る最大規模の豪雨に対する避難体制等の充実・強化を図ることが示され、「人的被害が発生するおそれがある地下街等が発達している区域を有する公共下水道等の排水施設」を想定した「水位周知下水道」が制度化されました。

【業務内容】
 本業務は、福岡市の博多駅周辺部を対象に仮設水位計を設置し、下水道管内の水位の挙動を調査・分析するとともに、流出解析モデルを活用して、本設水位計の設置箇所、避難開始の目安となる水位情報(雨水出水特別警戒水位)、内水浸水想定区域等について検討しました。
 また、下水道部局・防災部局・地下街管理者等と連携して通知・伝達を行う必要があるため、関係者において想定される活動内容と経過時間を明らかにするためのタイムテーブル案を作成しました。

実施フロー

仮設水位計の観測結果

内水浸水想定区域と水位

タイムテーブル案

想定最大規模降雨(153mm/hr)によるシミュレーション結果

【業務の目的】
 近年、短時間でかつ局所的な集中豪雨が全国的に発生しており、内水による浸水被害リスクが増加傾向にあります。これまでの下水道における浸水対策は、速やかな雨水排除を基本とし、計画区域全域において一律の整備目標で整備を進めることを基本としてきました。しかし、近年では「再度災害防止」に加え「事前防災・減災」、「選択と集中」等の観点から、浸水リスクを評価し、雨水整備の優先度の高い地域を中心に浸水対策を推進していく必要があります。このような背景のもと、本業務は事前防災の考え方に基づき、効率的かつ総合的な浸水対策の実施を図るため、当面・中期・長期の施設整備の方針等の基本的な事項を定める「雨水管理総合計画」を策定することを目的とします。

【業務内容】
 本業務では、効率的な浸水対策を図るため、各排水区の浸水リスクと都市機能集積度のマトリクスを用いて評価して、優先的に対策を実施すべき地区の優先度を決定しました。
 重点対策地区に位置付けられた地区においては、氾濫解析シミュレーションを用いて対策施設の効果を検証し、投資可能額を考慮した経済的な段階的対策計画を立案しました。

浸水対策実施区域の設定マトリクス

実施フロー

重点対策地区における氾濫解析シミュレーションによる対策施設の効果検証