【コンセプトは「魅せる・見せる」】
 新たに設置した理化学分析室・水質分析室は、その設計段階から「魅せる・見せる」をコンセプトとして取り組み、令和5年8月に実現いたしました。

【分析を魅せる】
 新たな理化学分析室・水質分析室では、実験台間に広いスペースを確保するとともに、分析項目ごとのエリア区分や多様な設備機器の配置し、多くの方々に環境測定分析について「見て、感じて、触れて」いただき、その魅力を伝えることができる空間、「魅せる分析室」が実現しました。また、これまでの分析室のイメージとは違い、ホワイトとグレーを基調色とすることで開放感が得られるよう配慮しています。

開放感のある水質分析室

多様な設備機器を配置 (左:LC/IC 右HSGC/MS)

【分析室を見せる】
 「分析品質(正確さ、精度)の確保」は、環境測定分析業務に求められる最大の責務です。
 品質を見せるためには、見学者から分析作業者の動きが見えなければなりません。そのため、理化学分析室・水質分析室は、廊下との境界を大型ガラスで仕切り、視界が遮られる実験台上の試薬棚、資器材などを最小限とし、廊下からも室内全体が見渡せる空間を計画しました。そして、作業効率上のデメリットを補うため、分析項目ごとのエリアや多様な設備機器の配置はもとより、サイズ、機能など細部に至るまで検討を重ね「見せる分析室」が実現しました。
 もちろん、分析作業者の作業環境、健康への配慮、分析室外への排気、排水についても法令を遵守するとともに、ドラフトチャンバーの選定にあたっては、安全面や用途だけではなく省エネ性能も重視し、低風量タイプを採用しました。

廊下からも見渡せる理化学分析室

分析項目ごとのエリア区分と低風量ドラフトチャンバー

 環境基本法の規定に基づき、水質汚濁(公共用水域、地下水)、大気汚染及び土壌汚染に係る環境基準が定められています。そのほか、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、悪臭規制法には、それぞれ排水基準、排出基準、規制基準が設けられています。
 当社では、最新の機器を用いて、各種法令に基づく測定・分析及び環境モニタリング調査を行います。

■水質分析
 ・公共用水域の水質汚濁に係る各環境基準項目
 ・地下水の水質汚濁に係る各環境基準項目
 ・排水基準に係る有害物質及び一般項目(有害物質以外)
■大気・排ガス分析
 ・排出基準に係る有害物質、塩化水素などの一般環境大気
■土壌分析
 ・土壌環境基準に係る有害物質
■悪臭分析
 ・規制基準に係る特定悪臭物質、臭気指数

 近年では、大都市地域を中心とした都市・生活型の大気汚染、その生成機構、挙動が複雑な微小粒子状物質(PM2.5)、低濃度長期暴露による健康影響が心配される有害大気汚染物質、地球温暖化に関わる問題など、幅広い取り組みが課題となっています。特に、光化学オキシダントの環境基準の達成率は、令和3年度において、一般局0.2%、自排局0.0%と極めて低い状況にあります。また、光化学オキシダントの主成分であるオゾンは、それ自体が温室効果ガスであると同時に、植物の光合成を阻害し二酸化炭素吸収を減少するとして、気候変動への影響も懸念されています。

【最適な大気調査をご提案】
 大気汚染物質の濃度は、気象、地形、固定・移動発生源などが相互に関係しています。当社は総合建設コンサルタントとして環境問題に取り組むなかで、大気調査や気象解析データを環境影響評価における現況調査、環境モニタリングの基礎資料として活用しています。また、気球に気象観測器(GPSゾンデ)を吊り下げて浮揚させ、上空の風向・風速、気温・湿度の鉛直分布を観測する上層気象調査の実施もあわせて、豊富な経験と実績を活かし、さまざまな現場において、その目的にあった最適な調査をご提案、実施します。

当社で活躍する大気測定車(ⅠからⅢ号)

上層気象調査の実施状況

【水銀は地球上を漂う!?】
 有害大気汚染物質とは、低濃度であっても長期的な摂取により健康影響が生ずるおそれのある物質のことをいい、該当する可能性のある物質として248種類、そのうち特に優先的に対策に取り組むべき物質(優先取組物質)として、ベンゼンなどの揮発性有機化合物(VOC)をはじめ、アルデヒド類、重金属類などの23種類がリストアップされています。
 このうち、水銀は常温で液体である唯一の金属元素で、揮散しやすい性質を持っています。そのため、様々な排出源から排出された水銀は、地球上を循環し、その滞留時間は1~2年と言われています。
 その後、分解されることなく環境中に蓄積した水銀は、微生物によりメチル水銀に変化、食物連鎖を通じて魚介類に取り込まれます。水銀及びメチル水銀等は中枢神経系及び末梢神経系に対し有毒であり、人の健康に有害な影響を及ぼす恐れがあります。
 このように、世界的に懸念される化学物質であることを認識し、人の健康及び環境を保護することを目的に、「水銀に関する水俣条約」が採択され、大気汚染防止法も改正されました。
 当社では、これまでにも廃棄物焼却施設に係る計画、設計、環境影響評価に取り組んでまいりました。廃棄物焼却施設は条約付属書D対象であり、大気への排出が規制されています。今後も、廃棄物焼却施設の水銀調査・分析を通じて、世界的な人の健康、環境の保護に努めてまいります。

還元気化水銀測定装置と気中水銀測定装置(ともにサンプルチェンジャーにより完全自動化、分析品質(正確さ、精度)を確保)

 土壌汚染対策法が平成15年に施行され、その後の改正に伴う規制強化や、自治体の条例での上乗せ規制など、土壌・地下水調査が必要となる機会が増えています。土壌汚染対策法が他の環境法令と大きく異なる点として「事業者以外の土地所有者に法的義務が課せられる場合がある」ことが挙げられます。
 当社では、「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関」として、法手続きや行政対応、調査、分析、評価、対策工事に至るサービスを提供します。

土壌汚染対策法上の調査・フロー

土壌汚染対策法に基づく認定調査(試料採取の状況)

【揚水試験】
島根県出雲市上下水道局 来原系水源開発揚水試験業務
 本業務では、水源候補地において揚水井(φ250×40m)3井、地下水位観測井(φ50×15m)3井を設置し、揚水試験を行うとともに、既設地下水位観測井をあわせた10井において地下水位観測を実施しました。結果、本調査地において日量10,000m3以上の揚水が可能であることを確認するとともに、取水施設整備計画(取水エリアの確定、井戸配置場所の選定、影響圏の確認、井戸仕様の決定)を立案しました。