地理空間情報が活用される背景

 我が国は、その国土の地理的・地形的・気象的な特性により、従来から数多くの自然災害に見舞われてきました。今後、気候変動に伴う水災害・土砂災害の激甚化・頻発化が懸念されるほか、南海トラフ地震や首都直下地震等の巨大地震の発生リスクも切迫しています 。
 このような中、衛星画像、航空写真、無人航空機で記録された画像、3次元点群データなどの地理空間情報を災害時の初動対応・応急対応等に活用する取組みが国や地方公共団体で広がっています。また、高精度な3次元地図を活用して、都市計画に関する検討・分析やインフラ管理の高度化が進んでいます。
 地理空間情報技術の基盤は地理情報システム(GIS)と衛星測位です。
 激甚化・頻発化する自然災害や地球規模の環境問題への対応、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上、豊かな暮らしのための多様なサービスの創出のため、当社では様々な分野で地理空間情報の活用に取り組んでいます。

令和5年8月撮影 環境分析センター周辺航空写真

【地理情報システム(GIS)とは】
 GISとは、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。航空写真や衛星写真、数値地形図をベースに様々な解析を行うシステムを提供します。

【防災・減災に役立つ基盤地図等の整備】
 航空レーザ測量、空中写真測量等により、 三次元空間データを取得し、ハザードマップ作成等に必要な基盤地図等の整備を行っています。
 高精度な標高データを基に、浸水想定区域や土砂災害警戒区域等の災害リスクをGISで可視化することにより、防災計画の策定に貢献しています。

【GISを活用した高度な施設管理】
 道路施設、河川施設、上下水道施設等の各種施設情報をデータベース化し、GISで一元管理することにより、維持管理計画の策定、社会・住民サービスのDX化に貢献しています。

【正確な位置を測る、インフラを調査する】
 空中・地上・水中から、様々な計測機器を活用し、地形測量やインフラ施設の点検調査を行います。取得した画像等のデータから構造物の診断等を行います。

主な保有機器:
GNSS測量機、地上型レーザスキャナ、UAVレーザ測量機、水中ドローン、MMS(車載写真レーザ測量システム)、SLAM技術対応自立飛行型ドローン

【地理空間情報を活用したグリーン社会への貢献】
 航空レーザ計測成果等の地理空間情報を活用した森林資源情報解析を行っています。GISで森林資源を管理することにより、地球環境規模の解決はもとより地域レベルにおけるグリーン社会構築への取組みに貢献しています。

【業務目的】
 本業務は、国土交通省及び地方公共団体が発注した工事の成績等に関するデータのとりまとめ、整備及び技術評価点の算定を行うことを目的とした業務です。

【業務内容】
 国土交通省及び地方公共団体(都道府県及び政令市)が発注した工事に関するデータ(100,000件以上)を収集し、入力頂いた情報(工事件名、請負金額、契約工期、工事種別、工事業者、工事成績等)の照査を行い、技術評価点算定に用いる係数の算出及び技術評価点の算出を行いました。

【技術的特徴】
 本業務では、国土交通省や地方公共団体のデータ入力者(職員)に対して、空欄・異常値等の誤入力を防止するため、エラーチェック機能を施したデータ収集様式を提供し、更に収集したデータは当社が開発したチェックシステムを用い「工事実績データ(CORINSデータ)」などのデータと比較し相違点を発見・修正し、入力頂いた情報(データ)の精度を確保しました。

図 スコア算出処理イメージ

図 算定結果確認イメージ

【業務目的】
 兵庫県が管理する地下河川について「地下河川等健全度調査マニュアル(平成31年3月)」に基づき、限られた人員、予算、時間の範囲で効率的・効果的な維持管理を行うことを目的として、地下河川の点検及び健全度評価を実施した業務です。

◇◇◇地下河川とは◇◇◇

 洪水の時など、川の水があふれないようにするためには、水が流れる場所を大きくする必要があります。このために堤防を高くしたり、川底を掘ったり、川幅をひろげたりしますが、ひとが多く住んでいたり地形的な問題があったりしてこの方法が使えない場合があります。この場合に山地部の地下や都市部の公共施設の下などの地下空間を利用した「地下河川」がつくられることがあります。ただし、地下河川は工事にかかるお金が高かったり、管理がむずかしかったりするため、つくるには十分な検討が必要となります。

【出典】国土交通省関東地方整備局太田川河川事務所「地下河川とは」
(https://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/chiebukuro/search/zigyou/No_049.html)

【業務内容】
 対象となる地下河川の構造はボックスカルバート(矩形)、セグメント(円形)等であり、函体内のクラック、漏水、断面欠損、継手の開き等の変状を目視点検等により調査し、健全度の判定を行いました。

【写真】(上)西谷川(ボックスカルバート)
    (下)観音寺川放水路(セグメント)

【技術的特徴】
 感潮区間については潮汐の影響により水位の変動が大きいため、予め調査箇所の水位変化を把握し複数の方法を使い分ける必要がありました(満潮時:水中UAV/干潮時:目視など)。その他、施設規模や気中部高さ等を考慮した上で、自走式カメラ、水中UAV、360°カメラ等施設に応じ適切な方法を選定しました。

【写真】①水中UAV ②水中UAVの作業状況 ③水中UAV操作画面 ④自走式カメラ ⑤自走式カメラの作業状況

【業務内容】
 奈良県の竜田川ほか13河川を対象とし、河川の法尻対策工の検討及び今後の河川台帳の基礎資料として使用する数値地形図の作成を実施しました。対象河川の中心線の両岸50mを作業範囲とし、はじめに、過年度に撮影された空中写真や同時調整結果の精査を行いました。次に、樹木の下や平地と斜面の境目などの空中写真で確認できない場所、築堤や護岸といった河川構造物の状況について現地調査を実施し、既往の航空レーザ計測成果及び空中写真を使用した数値図化・数値編集を行いました。

【業務目的】
 ①現況道路台帳図及び都市計画基本図の更新業務に使用、②課税の公平を期するための固定資産課税客体の正確な把握、適正な評価、③課税業務の円滑な運営を図ることを目的として、カラー空中写真を撮影し、画像データの作成及び家屋と道路の経年異動判読を行う業務です。
【業務内容】
 空中写真撮影は市全域を対象としてデジタル航空カメラによるカラー垂直写真撮影を実施した。地上標定点8点について、GNSS観測による標定点測量を行い、数値写真及び数値地形モデルから空中三角測量によりデジタルオルソ画像を作成しました。また、本業務で撮影した幾何補正画像データと、前年度撮影データを用いて家屋及び道路の経年異動判読を実施しました。
【技術的特徴】
 本業務における撮影成果等は市の固定資産課税業務等で活用されるため、撮影仕様や成果の品質に十分留意し作業を実施しました。特に家屋異動判読については判読漏れ、記号の誤り及び脱落のないよう複数人体制で判読・検査等を行い、精度を確保しました。

【写真】(左)撮影状況 (右)簡易オルソ

【写真】家屋異動判読実施例(左が新しく撮影した画像)

【業務内容】
 兵庫県において、土砂災害防止法により指定された土砂災害警戒区域等の公示図書に用いる地形図を、最新の空中写真を用いて修正しました。はじめに、旧基盤図と最新の空中写真を比較し地形改変箇所を抽出する予察を行いました。既往基盤図が存在しない範囲については新規図化を行いました。次に、修正図化及び新規図化の範囲について、土砂災害防止法に使用する数値地図作成ガイドラインに基づき、地図情報レベル2500で現地調査・数値図化・数値編集を行い、数値地形図データを作成しました。

※写真の施設(待受け擁壁)は当社の河川防災技術部が、平成24年度に急傾斜地崩壊対策事業の業務として地質調査及び詳細設計を実施したものである。

【業務目的】
 本業務は、土砂災害警戒区域等のリスク情報をGISとして構築し、県民にとって使い易くデザイン性の高い周知ツールを作成することが目的です。

【業務内容】
 土砂災害啓発周知ツールの構成はWebGISとし、オープンソースGISにより開発しました。ツールに搭載した主題図データは、土砂災害警戒区域、傾斜区分図、洪水・津波・高潮浸水想定区域図、指定緊急避難所、浸水実績であり、背景地図は地理院地図のタイル画像を利用しました。ツールでは、利用者がマップ上に避難所、自宅、避難経路等の情報を任意に書き込める機能を搭載し、画像(png、pdf)の出力、画面上で距離計測、面積計測、断面図表示を可能にしました。

【技術的特徴】
 避難経路における土砂災害警戒区域以外の傾斜30度以上の箇所の把握及び浸水実績の確認ができ、本ツールを活用することにより、県民自らが避難ルートやとるべき行動をあらかじめマイ・ハザードマップとして整理することが可能となります。PCだけでなくスマートフォンでの利用も可能なシステムを開発しました。

【業務目的】
 本業務は、和歌山市企業局が保有する浄水場施設、ポンプ場施設、配水池施設等に関する情報を一元的・体系的に管理、運用することを目的として、施設台帳システムの構築及び水道施設台帳の作成を行った業務です。

【業務内容】
 収集した資料と現地の施設状況との整合を図るため、対象施設の現地調査を行い、設備情報を補完しました。施設台帳システムについては、操作マニュアルを作成し、職員向けの操作説明会を実施しました。また、本業務で構築したシステムを用いて水道施設台帳(施設調書)を作成しました。

【技術的特徴】
 本システムは将来的なオンラインでの利用を見据え、標準的なブラウザで動作する仕様とし、職員が平易に操作できるようボタンの配置や画面遷移等に留意しシステムを構築しました。また、図面や写真等の添付ファイルを施設・設備機器と関連付けて登録できるシステムを開発しました。

【業務目的】
 県が運営する流域下水道について、前年度に完成し今年度開始前までに供用開始となる施設について資産評価を行う業務です。

【業務内容】
 下水道施設(管渠、ポンプ場、処理場等)について、工事設計書等の資料をもとに資産評価基準により分類及び評価を行いました。対象資産の特定は下水道施設台帳システム(AMDB)データを用いました。また、改築工事等に伴い撤去された資産の整理を合わせて実施し、除却資産として整理しました。本業務で資産評価した結果は、財務会計システムのフォーマットに従い入力を実施し、結果の整理を行いました。

【業務目的】
 流域下水道事務所管内の管路施設の基礎情報、維持管理情報を電子化することで、今後の耐震対策の検討及びストックマネジメント計画に基づく適切な維持管理を容易に行うことを目的とした業務です。

【業務内容】
 国土交通省が進める「下水道共通プラットフォーム」で活用できるデータの電子化を行いました。また、今後、大阪府で導入予定の管路包括管理業務において運用可能な電子データ化の整備に必要な運用マニュアル及びGISデータ定義書の作成を行いました。

【技術的特徴】
 データ整備においては、既存の建設CALSシステムと下水道共通プラットフォームのそれぞれで運用可能なデータを作成すると共に、持続的な下水道事業の継続の観点から必要な維持管理情報について、GISの主題属性項目を追加検討し、汎用的なマッピングシステムで利用できるようデータを整備しました。

【業務目的】
 航空レーザ計測成果を用いて地形及び森林資源等の解析を行うことにより、高精度な森林情報を取得し、地域の計画的かつ効率的な木材生産に資することを目的としました。

【業務内容】
 地形情報解析では、微地形表現図(CS立体図)、傾斜区分図、既設路網分布図を作成しました。
森林資源情報解析では、林相区分図・樹冠高データ(DCHM)の作成、樹頂点の抽出・立木本数の算定、単木樹高・胸高直径・材積の推定を実施し、森林情報一覧表を作成しました。また、森林資源情報解析結果の検証を行うために、60箇所の現地調査を実施しました。最後に森林資源情報解析結果を用いて、木材生産適地分布図、生産団地計画図、要整備森林分布図の作成を実施しました。

【技術的特徴】
 ・樹頂点の抽出(局所最大値フィルタ法)の原理
ウィンドウサイズの中で最も樹冠高データ(DCHM)が高いセルを樹頂点として抽出します。
手法

  1. 樹冠高データ(DCHM)にArcGIS Spatial Analystのフォーカル統計を用いて最大値フィルタ(フィルタ中心セル値をフィルタ内最大値に置き換える)を適用し、DCHM’を作成します。
  2. DCHM’とDCHMの差分画像を作成します。
  3. 差分が0のセルを樹頂点としてポイントデータに変換します。

注意点 ウィンドウサイズの決定方法
ウィンドウサイズ大:
のように密生している樹木を過少に抽出します。
ウィンドウサイズ小:
のように幹が枝分かれしている樹木を過剰に抽出します。
 本業務では現地調査での樹木本数と複数種類のウィンドウサイズで作成した樹頂点データを比較し、最も現地調査結果と整合が取れたサイズの円をウィンドウサイズとして採用しました。

半径 1mの円で樹頂点を抽出

【大規模盛土造成地における災害】
 兵庫県南部地震や新潟県中越地震および東北地方太平洋沖地震等の際に、谷や沢を埋めた造成宅地または傾斜地盤上に腹付けした造成宅地において、盛土内部の脆弱面を滑り面とする盛土の大部分の変動や盛土と地山との境界面等における盛土全体の地すべり的変動(以下「滑動崩落」という)を生ずるなど、造成宅地における崖崩れ又は土砂の流出による災害が生じています。
 変動予測調査を行うことにより、盛土箇所を把握し、対策事業を優先的に行う箇所を抽出することが可能となります。

大規模盛土造成地で発生する滑動崩落のイメージ

第一次スクリーニング

標高差分図

  大規模盛土造成地は、現況地形図と旧地形図により標高差分図を作成し抽出することにより位置や規模が把握できます(第一次スクリーニング)。この大規模盛土造成地は「大規模盛土造成地マップ」として地方公共団体より公表されています。

【第二次スクリーニング】
 第一次スクリーニングで抽出された大規模盛土造成地に対して、優先度の評価を行いました。安全性が低いと考えられる大規模盛土造成地を選定し、地盤調査(第二次スクリーニング)の計画を行いました。
ガイドラインにより指定された優先度評価フローに従い評価を行うため基礎資料の収集や現地踏査による変状の確認を行い、情報を収集しました。

【簡易地盤調査】
 より詳細な調査が必要と判定された大規模盛土造成地は簡易地盤調査としてSWS試験を実施しました。

優先度評価フロー

現地踏査状況写真

SWS試験