1.下水道に求められる役割

 我が国の下水道は、汚水の収集・処理、雨水の排除、汚水の高度処理化など、その時代の社会的ニーズに対応しながら、その機能を発展させて、その役割を果たしてきました。
 ここ最近では、地球温暖化や環境問題が世界的な課題となっており、我が国の下水道事業においても、これらの課題に積極的に取り組むことが要求されてきています。
 下水道には、これまで未利用のエネルギー資源が含まれていることから、これらを有効活用することで、温室効果ガス削減や再生可能エネルギー創出、資源再利用による循環型社会の構築に寄与することが可能なポテンシャルを含んでいます。

2.下水道のエネルギーの消費

 下水道事業は、各工程において、温室効果ガスを排出しています。
 下水処理場では、年間約147億m3の下水処理を行っており、その過程で全国の電力消費量の約0.7%(約75億kWh)の電力を消費し、さらに、日本の温室効果ガスの約0.5%(約596万t-CO2)を排出しています。
 このため、下水道事業においては、省エネルギーや温室効果ガス削減が必要であり、これからは、下水道が有する資源・エネルギーを利活用することで、循環型社会の構築を実現する必要があります。

■下水道における電力消費の内訳

■下水道からの温室効果ガス排出量

出典:国土交通省HPより

3.下水道が有する資源・エネルギーの利用

 下水道には多様な資源・エネルギーを保有しています。下水処理場を活用した地域バイオマスや下水熱の利用等の取り組みは、下図のように実施されています。

 出典:国土交通省HP(SDGs達成を目指した下水汚泥利活用のあり方について)より

4.下水道資源のポテンシャル

 下水処理場から発生する下水汚泥は燃料・肥料として高いポテンシャルを有しています。

  • バイオガスや固形燃料としてエネルギー利用が可能
  • リンを含む肥料を製造し、農業等において有効活用が可能

 また、下水の熱を利用することで、都市内の商業施設等の省エネ化が可能です。

出典:国土交通省HPより

 下水処理場における資源・エネルギーを活用し、循環型社会への構築を提案します。

 球磨川上流浄化センターは、平成11年4月に処理方式オキシデーションディッチ法として供用開始された球磨川上流流域下水道の下水処理場であり、処理された水は、球磨川に放流しています。
 放流先の球磨川は、熊本県最大、九州でも長さ3番目となる九州屈指の河川であり、険しい山々の間を流れることから、最上川・富士川とならんで日本三急流の一つとして全国に知られ、川下りなどの観光資源、鮎などの漁業資源、米作りなどの農業資源として、地域の生活に密接に結びついています。
 球磨川の水質環境保全のため、平成5年度より、流域下水道の計画が着手され、現在に至っています。
 弊社は、当初より下水道計画から、下水処理場の新設設計、増設設計、長寿命化計画、ストックマネジメント計画、設備改築設計および耐震補強設計を実施しています。

 熊本県を中心に九州地方で発生した「令和2年7月豪雨」の際には、人吉市内で球磨川の堤防が決壊されました。本浄化センターは、決壊箇所の上流に位置していたため、直接的な被害はありませんでしたが、再度災害対策として、本浄化センターにおける洪水浸水対策のための耐水化設計や、更には雨天時に流入量が増加することから不明水対策についても計画を行っています。

 今後も、経年劣化による設備の老朽化対策(設備改築設計)、耐震性能向上のための耐震補強設計、災害時などにおいても下水処理場の機能確保するための耐水化設計等を行い、持続可能な下水処理場に大きく貢献していきます。

1.業務の目的

 浮間水再生センターでは雨天時放流水質の向上を目的として、雨天時貯留池を整備する計画がありました。
 対象施設(南系)は上部が第一沈殿池、下部が雨天時貯留池として躯体を整備していますが、両施設とも未稼働施設であり、未稼働施設の雨天時貯留池と、第一沈殿池を暫定的に雨天時貯留池として整備し、稼働させる設計を行いました 。
 暫定運用期間は約20年となります。

2.業務内容と特徴

 現有の未稼働施設を雨天時貯留池として暫定利用するために必要な追加設備(ゲート、ポンプ等)を計画し、晴天時・雨天時流入量に応じた流入制御が可能なように躯体改造整備も行いました。
 雨天時貯留池は暫定供用期間終了後には現状の施設に復旧させる必要がありますが、設備は継続して使用可能なものとして整備しました。

3.技術的特徴と成果

 沈殿池と雨天時貯留池を比べた際に、最も思想、形状、運用方法が異なるのが底部に溜まった沈殿物の処理方法です。
 沈殿池ではフライト板を並べた汚泥掻寄機を用いてピットまで物理的に掻き寄せますが、雨天時貯留池ではフラッシング水による掃流で沈殿物をピットまで押し流し排除させる方法をとりますので、ほぼフラットな沈殿池底部を鋼板で水路状に形づくり、内部の空隙を軽量材で充填することで雨天時貯留池用の排水路を造り上げる設計を採用しました。
 これにより、荷重増に伴う既設躯体補強の必要性を回避し、暫定供用終了後の現況復旧作業も比較的容易に行うことができるようになりました。

 業務として新宿ポンプ所内の電気設備(受変電設備、非常用発電設備)の再構築を行いました。
 設備再構築の概要は下表に示すように受変電設備が高圧から特別高圧に、非常用発電設備が4,600kVAから6,000kVAにそれぞれ拡張するものです。

再構築設備概要

既 存再構築後
受変電設備高圧 6.6kv 1回線受電特別高圧 66kV 1回線受電
主変圧器✕2台
(特高受変電設備・高圧配電設備・低圧配電設備の再構築)
非常用発電設備ディーゼル発電機 4,600kVA X1基
屋内タンク 10,500LX1基
ガスタービン発電機 3,000kVA X2 基
燃料小出槽 2,5001X2基 地下燃料タンク 25,000LX2基

 新宿ポンプ所内の用地には既存建物が立ち並ぶため、施工計画として段階的に3期に分けて建物内で更新を繰り返すことで完結するようにしました。

設備再構築工事ステップ

No.内容建築工事区分
ポンプ棟 配電盤室再構築(電気設備盤撤去・新設/空調・照眀等改修)I期工事
特高受変電設備・同室改修(N2 消火設備新設)I期工事
既存高圧変電設備撤去(PE 工事)
新2号発電機室を一般取扱所規定に満足するよう改修し、新2号ガスタービン発電機(3,000kVA)新設II期工事
屋外に仮設発電機(800kVAX2基)設置(PE 工事)
既存ディーゼル発電機撤去の上、新1号発電機室を一般取扱所規定に満足するよう改修し、新1号ガスタービン発電機(3,000kVA)新設、仮設発電機撤去II期工事

 設備規模が大きくなるため既存建物内の部屋割りでは配置が困難でした。
 このため、間仕切り壁の位置変更や、建物内での新たな杭の打設を含め、段階的な施設の構造検討も行いながら計画を進めました。また、ポンプ棟、発電機棟ともに浸水対策も合わせて行いました。

1.業務の目的

下水道は、持続可能な地域づくりを目指していく上で、次に示す3つの課題を抱えています。

①自治体が所有する施設を管理する職員の減少
②施設(処理場・ポンプ場の土木施設・建築施設・機械設備・電気設備)の老朽化の進行
③人口減少に伴う使用料収入の減少

 上記課題を解決するマネジメント手法として「ストックマネジメント」があります。
 ストックマネジメントは、長期的な視点で施設全体の今後の老朽化の進展状況を考慮し、優先順位付けを行った上で、施設の点検・調査、修繕・改築を実施し、施設全体を対象として施設管理を最適化することを目的としています。当社では、自治体から発注される「処理場・ポンプ場のストックマネジメント計画策定業務」を行っています。

2.業務内容と特徴

⑴業務内容
 処理場・ポンプ場のストックマネジメント計画策定業務の業務フロー・業務内容を次に示します。

⑵特徴
 ①リスク評価は、自治体毎に施設の立地条件・自然災害などリスクが異なるため、業務毎に十分に情報を収集した上で実施する必要があります。
 ②長期的な改築事業のシナリオ設定は、自治体毎に年度予算の規模が異なるため、打合せで確認した上で実施する必要があります。

3.技術的特徴と成果

⑴施設の改築工事の実施時期・費用をまとめた実施計画の事例を以下に示します。

単位:百万円
名称工種改築工事グループ名称2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
A





機械NO.1 沈砂池設備62626
NO.2 沈砂池設備837
スクリーンかす洗浄設備104747
沈砂池ポンプ棟ゲート設備83434
2系最終沈殿池設備 117
2系最終沈殿池設備 215
消化タンク設備 1545
消化タンク設備 2545
電気送風機棟受麥電設備 1125353
送風機棟受麥電設備 231414
送風機棟監視制御設備 183636
送風機棟監視制御設備 394242
送風機棟制御電源 •計装用電源設備131414
送風機棟制御電源・計装用電源設備2133
送風機棟負荷設備83737
潸化タンク計測設備62828
㵎化タンク監視制御設備 1125252
土木汚泥消化槽間歩廊535

⑵下水道機械設備(汚泥掻き寄せ機)の調査・診断の具体的な事例を以下に示します。

 下水道施設が被災した場合、公衆衛生問題や交通障害の発生など住民の健康や社会活動に重大な影響を及ぼします。下水道施設は他のライフラインと異なり、被災時に同等の機能を代替できる手段がありません。このため、国土交通省においても重要な施設の耐震化を図る「防災」、被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を組み合わせた総合的な地震対策として下水道BCPを推進しています。
 下水道は処理施設、ポンプ施設、管路施設で構成され、いずれの機能が低下・停止しても市民生活に大きな影響が生じますので、重要な施設を優先して耐震化を進める必要があります。
 下水道施設の耐震設計(診断)では従来、静的線形解析による解析(耐震性能1、耐震性能2)を行ってきましたが、「下水道施設耐震対策指針と解説2014年版」、「下水道施設耐震計算例2015年版」において、耐震性能2’が新たに記載され、静的非線形解析による施設形状に見合った解析を行うことができるようになりました。

表-1 最新の耐震性能のランク
耐震性能ランク構造の性能
耐震性能1(レベル1地震動)修復せずに本来の機能を確保できる性能
耐震性能2 (レベル2地震動)速やかな機能回復を可能とする性能
耐震性能2'(レベル2地震動)安全性を確保し、速やかに最任限の機能を回復できる性能

 これまでの判定方法がコンクリート許容応力度または終局耐力応力度に着目したものであったのに対し、性能照査型の設計法ではコンクリートの損傷状態※に着目することで、より詳細な検討を可能とし、耐震性能2’の検討が可能となりました。
 ※損傷程度をコンクリートの曲げモーメント(M)と曲率(φ)の関係から評価する手法

 最新の計算手法では、静的非線形解析や有限要素法解析(FEM)があります。

表-2 部材の損傷度合い
損傷度合い部材の状態
損傷度I損傷はほとんどなし
損傷度II損傷は軽微で補修が容易
損傷度III損傷が大きく、補修・補強に時間が掛かる
損傷度IV破壊している

図-1 MーΦ曲線と損傷度の関係