我が国はパリ協定への対応として、地球温暖化対策推進法に基づく「地球温暖化対策計画」が、2016年5月に閣議決定され、目標達成に向けて国全体での取り組みが始まりました。
 その後、2020年10月26日第203回臨時国会において、当時の菅内閣総理大臣より「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言され、2021年4月22日の地球温暖化対策推進本部及び気候サミットにおいては、我が国は、2050年カーボンニュートラルに向けて、「2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けてまいります」という、従来の目標を7割以上引き上げる野心的な目標を発表しました。これらを受けて、2021年10月に5年ぶりに「地球温暖化対策計画」の改訂が閣議決定され、新たな削減目標が設定されました。
 水道事業は、全国の電力消費量の約1%をエネルギー消費(CO2排出)しており、エネルギー消費削減への取り組みが強く求められています。
 国の策定した「地球温暖化計画」においては、「水道事業における省エネルギー・再生可能エネルギー対策の推進等」として、2030年度21.6万トン-CO2削減(2013年度比約5%)の目標が掲げられています。

 水道施設の設備別の電力構成比を図-1に示しており、ポンプの使用割合が全体の9割以上を占めていることが分かります。また、図-2は、水道施設のポンプ定格容量の電力使用構成比を示しており、特に送水工程、配水工程のポンプ容量が大きいことが分かります。

 水道事業における省エネルギー対策としては、送水ポンプ設備、配水ポンプ設備への取り組みが効果的となります。

水道事業で導入が期待されている再生可能エネルギーには以下のようなものがあります。

太陽光発電

太陽光パネルで太陽の光エネルギーを直接電気に変える発電方法です。
浄水場の空地や斜面に設置することが出来ます。
また、貯水池や沈殿池等の水面に浮かせて設置するケースもあります。

風力発電

風力発電は、風の力を利用して風車を回し、風車の回転運動を発電機を通じて電気に変換する発電方式です。

水力発電(マイクロ水力発電)

水力発電は水の流れ(運動エネルギー)や水が流れ落ちる力(位置エネルギー)を利用して発電機を動かし電力を生む方式です。水力発電の中でも特にダム式のものや大河を利用したものがよく知られていますが、小規模施設で導入可能な出力1,000KW以下のマイクロ水力発電の採用実績が増加しています。

自己託送

自家用発電設備を設置する者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電気を一般送配電事業者が維持し、及び運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用発電設備を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般送配電事業者が提供する送電サービスのことです。
上水道事業においても、メガソーラーの自己託送も温室効果ガス削減対策の有力な施策となっています。

水道事業における温室効果ガス削減対策の導入効果を予測して温室効果ガス削減事業計画を立案します。

温室効果ガス削減年次推移

 西海市は、西彼杵半島北部の西彼町、西海町、大島町、崎戸町、大瀬戸町が合併した市で、長崎市と佐世保市の中間に位置してます。
 本市水道事業は、上水道事業(旧上水道2箇所、旧簡易水道13箇所、旧飲料水供給施設8箇所)、簡易水道事業3箇所より運営しております。
 近年、人口減少等によって水使用量が低迷し、それにともない料金収入も減少傾向で推移しています。また、簡易水道を統合したことで、数多くの小規模な施設を運営・管理しなければならない状況でもあります。
 この一方で、施設や管路の老朽化が進行しており、これらの老朽化対策および耐震化のための投資費用が増加する見込みであり、水道事業をとりまく環境は年々厳しくなることが想定されております。しかしながら、このような状況下にあっても、水道利用者である住民のライフラインとしての安全で安定した水道サービスを継続しなければなりません。
 上記の状況を踏まえ、本設計は、西海市の東部浄水場と中部浄水場を統廃合するための詳細設計を行いました。
 東部浄水場は昭和39年に築造され、現在まで機器更新等を行いながら稼働していますが、浄水場は経年劣化し、老朽化が進行しています。また、十分な耐震性を有していないため、隣接する中部浄水場に浄水機能を一本化し、併せて付随する施設・設備・管路の更新を行うことを目的として事業を行っています。

【統廃合計画模式図】

 省エネルギー対策は、水道施設の更新と合わせて水運用の総合的な見直しを行い、適正な施設または設備規模による省エネルギー対策が必要となります。
 本業務では、電気設備の更新に合せて、ポンプの運転制御方法を見直し、消費電力の削減、結果的には地下水の環境保全に貢献することが出来ました。

 監視制御設備は、水運用システムの中心的役割を担うものであり、近年の情報通信技術の発達により多様な機器及び構成を選択することが可能な状況にあります。そのため、必要な機能、運用方法、求められる信頼性及び安全性、コスト等を多面的に検討し、適切な設備構成とする必要があります。
 本業務では、監視拠点である浄水場及び場外配水施設(9箇所)の遠方監視制御設備を更新するとともに、セキュリティー面の確保と通信費用のコスト削減を実現し、費用対効果の優れるシステムとなるように構築しました。