【日本の地形的特徴と災害リスク】
 我が国の国土は3分の2が山間地であり、国民の資産が集中する平野部は国土の僅か10%にすぎず、この僅か10%の平野部は殆どが洪水氾濫に脅かされる地域となっています。山地沿いを主体に膨大な箇所数で存在する土砂災害危険箇所525,307箇所(平成14年公表)と地震被害も含めると、我が国には災害リスクが無い土地は無いといっても過言ではありません。
 事実として、毎年のように土砂災害、河川氾濫災害、地震災害が発生し尊い命が失われています。地球温暖化の影響もあり、災害の規模は年をおって大きくなる一方で、限られた財源では構造物を主としたハード対策で人命を守ることに限界が生じています。これに対応すべく、災害リスクに対応する危険箇所や警戒区域の設定とハザードマップ周知、避難体制の確立等のソフト対策を併用することによって減災を推進している状況にあります。

【土石流災害】

 土石流は、渓流の石や土砂が集中豪雨などによって一気に下流へと押し流されるものをいいます。その速さは時速 20〜40kmという速度で流下ルートの資産を破壊してしまいます。

【がけ崩れ災害】

 崖崩れは、斜面勾配30°、斜面高さ5m以上の急傾斜地で斜面が崩壊する現象です。集中豪雨などによって発生し、崖下の資産を破壊してしまいます。

【地すべり災害】

 地すべりは、緩やかな斜面において地盤が緩慢に移動する現象で、特定の地形、地質帯で見られ、規模が大きいことが特徴です。徐々に、資産を破壊してしまいます。

【洪水災害】

【地震災害】

 洪水は、河川からの氾濫(外水氾濫)と、市街地内の排水能力不足による浸水(内水氾濫)があり、広範囲に被害が及ぶ特徴があります。

 地震は、大きく分けて海洋型と直下型に分かれますが、海洋型に津波のリスクがあることを除けば、大規模な被害を及ぼす点では、同様の特徴を有しております。また、予知予測が難しく突発的に発生します。
現在では、震源が遠ければ緊急地震速報により避難等の行動を起こす僅かな時間を得られます。

【ハード対策事例】
 構造物によって、国民の財産・生命を守る対策です。土砂災害における主な事例を示しました。
 膨大な箇所数の対策工事を進めるには財源や時間的な猶予も無く、ソフト対策との組み合わせを含めて優先順位を検討しつつ対策事業は進められます。

【景観と対策効果の両立を確保したハード対策の事例】

 史跡や公園に関係する災害リスクを有する箇所においては、対策効果と景観性の両立が求められますので、公共性を踏まえて保全対象に合わせた景観を重視した設計をします。

【ソフト対策事例】
 ハード対策では物理的、財源的に整備まで時間を要することから人命を最優先として守り抜くソフト対策の施行に力が注がれています。また、ソフト対策にも大きく分けて公助、自助があり、多角的に推進されています。
 公助として、ハザードマップ作成・配布、異常気象情報等のプッシュ通知、避難所の整備運営等、市町村等が主導して実施するものが挙げられ、自助としてはマイタイムライン設定、地区防災組織立ち上げ等があります。また、中間的な位置づけとして防災訓練や防災教育、防災ワークショップ等も行われ、災害時要援護者を含めた地域ぐるみで尊い人命を守る取組がなされています。このほか、ソフト対策の基本となる危険区域指定や土地利用制限等も進められています。
 当社は、これらのハード、ソフト対策の両面を通じて防災対策に貢献しております。

【業務の目的】
 洪水浸水想定区域図(ハザードマップ)は、これを指定、公表することで洪水時の迅速な避難促進や、この図をもとに浸水対策の優先度を定めて被害軽減を図ることを目的に作成されます。
 弊社では洪水浸水想定区域図、ハザードマップ作成や、情報の周知業務(ワークショップや説明会等)も請け負っています。

【準拠するマニュアル及び手引き】

  • 洪水予報河川,水位周知河川の場合:洪水浸水区域作成マニュアル
  • 流域の小さい中小河川であって特定の条件を満たす場合:中小河川洪水浸水想定区域図作成の手引き
  • 浸水深が0.5m程度の精度を確保できないものの氾濫発生時における避難の検討に資する浸水区域や浸水深の水害リスク情報を示すことができる小規模河川の場合:小規模河川の氾濫推定図作成の手引き

【弊社で使用する氾濫解析ソフト】

  • リアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood」ほか

【想定する氾濫現象(氾濫シミュレーション)】
 氾濫シミュレーションで想定する氾濫現象は、「越水」及び「破堤」、あるいは「溢水」です。「越水」とは、増水した河川の水が堤防の高さを越えてあふれ出すことです。「溢水」とは、河川の水があふれ出るという点では「越水」と同じですが、堤防がない河川(掘込み河川、水路など)で起きた場合にはこのように表現します。「破堤」とは、堤防が壊れ増水した川の水が堤内地(民地)に流れ出すことです。よって堤防がない河川(「溢水」を想定する河川)では「破堤」は発生しません。

【洪水浸水想定区域図(ハザードマップ)】

【業務フロー】

【業務目的】
 本業務は、河川整備基本方針が検討されてから時間が経っていたため、最新の条件に変更し長期的な河川整備の最終目標となる基本高水流量を再算出すること。また、中期的な計画高水流量も算出し、当面20~30年で整備する河川工事内容を検討することが目的です。
【業務内容】
 1/100年確率の長期目標の流出量と中期的な目標流出量を最新の地形図や土地利用状況図等を用いて算出し、それぞれの流出量を流すために必要な河川平面・縦断・横断形を検討しました。
【技術的特徴】
 当水系は、流域面積が大きく、支川も多い河川でした。特に長期目標の流出量算出とその流出用に対して経済性、施工性、安全性等総合的に優れる河川整備計画を提案したことに対して発注者から高い評価を得ました。

【業務目的】
 本業務は、二級河川引地川の現況流下能力を確認するとともに、当河川にできる全ての遊水地が完成するまでの暫定計画(時間雨量50mm規模)と遊水地完成後に流下可能な中期的な河川整備計画(時間雨量60mm規模)に対応した河道計画を検討することが目的です。
【業務内容】
 当河川全区間の現況流下能力の確認、流下能力不足区間の具体的な河川整備メニュー検討、段階整備計画検討(整備区間・手順、整備内容、改修断面等)、概算工事費算出等を行いました。
【技術的特徴】
 治水性・経済性・施工性・事業の実現性等から6段階の整備区間・手順等を提案しました。特に関係機関協議時に説明しやすい資料を作成したことに対して発注者から高い評価を得ました。

【業務目的】
 令和元年10月台風19号の影響により、神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下地先を流れる早川の河川を横断する堰堤と堰堤下流の右岸側にあった護岸等が被災を受けました。本業務は、被災状況の写真撮影や被災した堰堤と護岸の復旧工事に必要な設計を行うことが目的です。
【業務内容】
 被災調査・現地測量・災害査定用報告書、災害復旧施設設計を行いました。
【技術的特徴】
 被災調査・現地測量を行い被災施設・範囲等を把握し災害査定資料を迅速に作成しました。また、設計では同規模の洪水でも安全性を確保できる施設高を提案、かつ経済性・施工性に優れる護岸形式を提案したことに対して発注者から高い評価を得ました。