「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」の構築は、今後の日本における環境への取り組み展開として、環境省の「21世紀環境立国戦略」の大きな柱に掲げられています。
 また、21世紀に入っての気候変動については、世界中で平均気温の上昇や海面水位の上昇が観測され、異常な高温や寒波など極端な気象現象も頻繁に確認されるようになっています。このような気候変動の影響は、自然環境だけでなく、水資源や食料生産、健康・福祉、インフラなど、広範な人の生活に及ぶものとなっています。
 さらに、「グローバルリスク報告書(2023年度版:世界経済フォーラム)」では、今後10年間のグローバルリスクの重要度ランキングリスクについて、上位5位のうち4つが環境課題で占められており、第1位から第3位までが気候変動に関する事項があげられています。また、第4位に挙げられている「生物多様性の損失や生態系の崩壊」の要因として、地域社会や国々が必要とする気候変動適応策支援が不十分であるとされています。
 これらの問題に対しては、火力発電所などのエネルギー分野だけの取り組みで対応できるものではありません。資源の循環利用や地域資源の有効活用などにより、地球環境への負荷を抑制する必要があります。
 このよう状況のなか、当社では「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」の構築に向けて、大気環境、水環境、土壌環境や生物多様性を保全し、開発と環境の調和を図るために、環境影響評価や環境保全に係る企画、調査、計画、設計を行います。

 本業務は、大阪市内を流れる正蓮寺川での利水事業に伴い、水質の実態を把握するため、関連水域において水質調査を行なったものです。
 当社は、この業務を(独)水資源機構関西・吉野川支社より受注しました。
 淀川の水を正蓮寺川及び六軒家川への分水することによる河川水質の保全効果について、経年的な調査結果を踏まえ把握するとともに、六軒家川における水質維持のための分水適正量についても調査によって把握しました。
 上記で把握した調査結果について、建設コンサルタントとしての幅広い知見、技術を駆使して、総合的な観点からの評価を加えました。
 これらの取り組みが認められ、(独)水資源機構関西・吉野川支社淀川本部次長より企業及び技術者表彰を受けました。

現地調査の状況

流れの停滞による水質悪化、水色の変化

 環境影響評価は、開発事業等による環境影響を回避・低減するための仕組みとして、環境保全に大きな効果を発揮してきました。また、平成23年、配慮書手続、報告書手続が新設された環境影響評価法の大改正は、地方公共団体の環境影響評価条例にも反映され、その制度は定着しています。しかし、その一方で、いくつかの課題もみえてきました。
 ・手続きに長い時間を要する。
 (その間の社会経済の変化により事業計画が見直される。)
 ・現地調査に多くの費用を要する。
 当社は、事業の計画段階での環境配慮(配慮書手続き)から、事業実施前の調査計画の立案(方法書段階)、現地調査、予測評価、環境保全措置の検討、事後調査計画(準備書段階)、住民説明会や環境影響評価審査会のサポート、これらを踏まえた最終的な図書の作成(評価書段階)、事後調査の実施(報告書段階)に至るまで、豊富な実績を有しています。
 これらの豊富な経験を活かして、また、環境影響評価制度に係る課題を踏まえたうえで、事業の種類や規模、地域特性に合わせた環境影響評価を提案します。

【わかりやすい図書の作成】

 環境影響評価における図書は、専門的な用語がならび、一般の方からはわかりにくくなりがちです。一般の方からのご意見も踏まえながら、環境影響を可能な限り低減させるためにも、図表に工夫を凝らして、わかりやすい図書の作成に努めることを心がけてまいります。また、環境保全措置をより具体的に示すことにより、一般の方の安心と安全に努めてまいります。

【事後調査(報告書段階)と環境保全措置の重要性】
 対象事業の実施後には、評価書で公表した事後調査実施内容に基づき工事中及び供用後の事後調査を実施することになります。事後調査の結果、予測結果を上回る著しい環境影響が確認された場合、改めて環境保全措置の追加・再検討をすることとなります。
 準備書あるいは評価書で検討した環境保全措置の効果を含め、事後調査の結果等を広く周知することにより、事業の実施における環境の保全に係る取組の状況等について、住民等の理解が深まることとなりますので、このような取組は、住民等の信頼性や環境影響評価の実効性の確保につながるものであり、今後ますますその重要性は高まっていくものとみられます。

工事中における事後調査(大気質、騒音、振動)

環境保全措置(左:濁水処理装置、中央:騒音振動の常時監視、右:移植植物)

森林環境創造ゾーンの創出

 当社では、田園などの身近な自然から、沿岸海域、国立公園に代表されるような原生的な自然まで、さまざまな自然環境を対象に動物(哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、昆虫類、海藻藻類、魚類、底生生物、プランクトン等)、植物、生態系に係わる調査を実施しています。
また、環境影響評価におけるレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)等に記載される野生生物の保全計画の立案、実施のほか、その地域本来の自然環境を脅かしている外来種の分布、定着の把握、河川整備計画等の調査なども行っています。
 さらに、子どもたちに向けた環境学習を実施し、自然環境や動植物についての知識や理解を深める場を提供しています。

【最新技術を用いた調査・検討】
 UAV(ドローン)、赤外線カメラ、インターネット、GPS等の最新技術と豊富なフィールド調査経験を組み合わせ、さまざまな自然環境の中で的確な調査・検討を行っています。

自然環境調査においてもUAVが活躍

UAVによる琵琶湖ヨシ帯密度分布の把握

UAVによる植生の把握

赤外線カメラによる動物調査

【地域と連携した環境活動】

河川における魚類、底生生物調査(環境学習)

【猛禽類の保護を通じた里山の保全】

サシバの代替巣の設置

クマタカのペア
(環境省レッドリスト2020絶滅危惧ⅠB類(EN))

【自然再生・生態系ネットワーク】

河川環境検討シート